謀攻篇 孫子 名言

謀攻篇

孫子曰く、用兵術は、敵国を保全したまま利益を引き出すを上策とし破るを次善とする。敵の軍団を保全したまま利益を引き出すを上策とし破るのを次善とする。敵の旅団を保全したまま利益を引き出すを上策とし破るのを次善とする。敵の大隊を保全したまま利益を引き出すを上策とし破るのを次善とする。敵の小隊を保全したまま利益を引き出すをを上策とし破るのを次善とする。
そういう訳で、必ずしも百戦百勝が最善というわけではない。
戦わずに相手を降伏させる事が最善である。
故に、上手い戦い方とは、敵の策謀を未然に打ち破ることである。次は相手の同盟関係を断ち切ることである。その次は交戦して敵の軍を撃破することである。下策は城攻めに訴えることである。
城攻めはやむなく用いる手段である。
城攻めをするには、盾や装甲車など攻城兵器の準備で数ヶ月を要し、土塁を築くにも数ヶ月を要す。
勝利を焦る将軍が城攻めを強行すれば、大きな害を被っても落とすことはできない。相手の本拠を攻めるにはこれほどの犠牲がしいられる。
故に、戦いの上手い将軍は、交戦することなく相手を制し、交戦することなく城を手に入れ、長期戦に持ち込むことなく国を破る者を云う。
傷を負う事なく争うことで、自軍を消耗させずに利益を引き出すことができる。これが謀攻(ぼうこう)の法と云う頭を使った賢い戦法である。
故に、用兵術は、相手に対して十倍の力なら包囲する。相手に対して五倍の力なら攻撃する。相手に対して倍の力なら分断する。相手に対して互角の力なら上手く戦う。相手に対して劣勢の力なら戦いを避ける。
故に、自軍の小ささを無視して強大な相手に戦いを挑めば、ただ餌食となるのみである。軍を用いる為には相手との兵力差を考慮しなければならない。
そういう訳で、将は国家の補佐役なり。将軍の補佐が良く行きとどいていれば国は強くなる。将軍の働きに隙が生じれば国は弱くなる。
故に、君主は次の三つに注意して将軍とよく連携しなくてはならない。一は、進むべき時ではない場面で進撃を命じ、退くべき時ではない場面で退却を命じるような場合。これでは将軍の行動のお荷物になる。
二は、軍隊の内部事情を知らぬまま政治で干渉する場合。これでは軍士をいたずらに混乱させる。
三は、軍隊の指揮系統を無視して直接命令をだすような場合。これでは将軍や内部に不信感を植え付ける。
軍隊が惑い不信感に陥れば、それに乗じてすかさず敵が攻め寄せて来る。このような君主の行動はつまるところ軍を乱して勝ちを放棄することになる。
故に、勝つためには次の五箇条がある。これを列挙する。一、戦機と待機を的確に判断できれば勝ちに繋がる。二、有利不利、情況に応じた行動がとれれば勝ちに繋がる。三、上下、国民と君主の目的が一つであると勝ちに繋がる。四、態勢を固めて、相手の隙を探れば勝ちに繋がる。五、将軍が有能で、君主が余計な干渉しなければ勝ちに繋がる。
これらが成功を収めるため理解すべきことである。
まとめると次のようなに云える。彼を知り己を知らば、百戦して危うからず。
彼を知らず己を知れば、成否の確率は五分五分。
彼を知らず己も知らざれば、戦う毎に必ず敗ける。